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酢味噌は、江戸時代に流行った料理法

最近の若い子は「わけぎのぬた」を知らない。巷では、そんな言葉が囁かれている。惣菜の主力が段々と家庭よりスーパーの惣菜コーナーへの比率が高くなると共に、「わけぎのぬた」が姿を消しつつあると言われている。酢味噌で作る「わけぎのぬた」は、水分が多く出る分、惣菜商品には不向きで、その手の商材が惣菜コーナーから見えなくなれば、自ずと家庭での立ち位置も変わってしまう。そんな事まで危惧した発言だったのだろう。
そもそもわけぎは、ユリ科のネギ属の植物。ネギとエシャロットを交雑させてできたものである。種子を作らず球根に分かれることから〝分葱″(わけぎ)と呼ばれるようになった。関西では本種のみを指すが、関東では「わけネギ」を含めて「わけぎ」と呼ぶようだ。ちなみに熊本では「一文字」と呼んでいるし、大分では「千本」(せんもと)と呼ぶ。わけぎは、前述したように玉葱にも似た球根性の多年草で、温暖な地域で栽培される。産地としては、広島県の尾道や佐木島が有名で、「わけぎのぬた」は、今や広島県の郷土料理として紹介されているくらいだ。
「わけぎのぬた」もそうだが、日本料理には、「ぬた」と称される酢味噌料理がある。「ぬた」は沼田のことで、ドロドロとした酢味噌の和え具合いが沼田のように思えることからそんな名前が付いた。
味噌のコクと酢の酸味、砂糖を使った甘みが素材にバランスよく絡み、わけぎを始め、コンニャクや海藻、刺身などと相性がいい事から家庭でもよく作られていた。ちなみに我々は、「ぬた」と聞けば、酢味噌和えをイメージするが、高知県ではすり潰した葉にんにくに、味噌・酢・いりゴマ・砂糖を混ぜた調味料を呼ぶらしい。

 

 酢味噌は、古くからある日本料理の調味術で、その発祥は定かではない。酢は、調味料としての歴史が古く、酒がひねてすっぱくなったことから発見された。その製法は、4~5世紀に中国から和泉の国へ伝来している。その手法を用いて今の大阪府南部では、古くから和泉酢なる特産品が造られており、全国的にも有名だった。合わせ酢自体は、すでに奈良時代には存在したようだ。
万葉集に「醤酢(ひしおず)に蒜(ひる)搗(つ)き合てて鯛願ふ 吾(われ)にな見せそ 水葱(なぎ)の羹(あつもの)」という句が詠まれている。
意味は、搗き砕いたにんにくに醤(ひしお)と酢を混ぜたもの(二杯酢)で鯛を食べたいと思っていたら、水葱(なぎ)の羹(あつもの)など見せてくれるなとのいう内容。
水葱はミズアオイで、羹とは熱い吸物を指す。こんな風に古くから合わせ酢は生活の中で存在感を示しており、使われていたようだ。味噌は、古代中国の大豆塩蔵品の醤(ひしお)が起源とされるが、日本にいつ伝来したかはわかっていない。ただ、平安時代の「大宝律令」の中に「未醤」(みしょう)という文字が見られる。醤を日本で工夫し、独自の製法によって造られたのが、我々が基礎調味料として使っている味噌である。味噌は、戦国時代には味噌丸として活用。武将達が合戦へ赴く際の携帯食用に持って行き、野山で調味料として用いたようだ。

 味噌が、調味料として広く活用されるのは江戸時代。江戸の人口が多くなり、世界的に見ても大都市の様相を呈した時代に、需要に生産がまかない切らず、三河や仙台などの地方都市より江戸へと送られた。江戸の人口は、参勤交代の武士や人足で男女比がいびつに。
男性が多いために外食が発達した。味噌屋が大繁盛すると共に味噌を使った料理も多く開発されている。その一つが酢味噌料理だろう。
よく化政文化といわれる、いわゆる文化文政期(1804〜1830年)には、食の世界も充実し、酢の物が流行する。その中でも合わせ酢が多用されたと聞く。
江戸懐石近茶流宗家の柳原尚之氏らの論文「江戸期における日本料理への酢の使われ方」に面白い資料が見られる。柳原氏は、江戸期の出版物を中心に調査し、酢の使われ方について論文を書き上げたわけだが、それによると合わせ酢の種類の多さをその時代を特徴づけるものと記している。
合わせ酢の中でも最も種類が多いのが酢味噌で、彼が調査した江戸期の料理本の中でも61種類も確認されていると書いている。味噌と酢を単純に合わせたものから、山椒酢味噌や生姜酢味噌、ゴマ酢味噌、海苔酢味噌など色んなものがある。
特に江戸期の料理書で広く一般人にも読まれた「素人包丁」には、77種出て来る合わせ酢のうち45種類もが酢味噌であったという。それくらい酢味噌は、一般的に料理に用いられていたのだろう。

酢味噌を作る際の黄金比は、酢と味噌と砂糖の割合が2:1:1である。
先の「わけぎのぬた」もそうだが、酢味噌を用いるものには、「ねぎぬた」「ワカメとタコの酢味噌和え」「ふきのとうの酢味噌和え」「セリの酢味噌和え」など数えきれないくらいある。ふきのとうやセリなどの山菜やホタルイカなど春らしい素材に合わせる事が多々あるようだ。
春が旬のわけぎも時には「白味噌」を使って家庭で作りたい。そうすれば、「わけぎのぬた」がいつまでも家庭料理の定番位置に居続けることができる。
スーパーの惣菜コーナーにないからといって忘れてしまうには忍びなく、伝統的な料理はいつまでも大事にして行くべきではないだろうか。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)

 

sumiso

(2024/4/18)

<著者プロフィール>
曽我和弘
廣済堂出版、あまから手帖社、TBSブリタニカと出版畑ばかりを歩み、1999年に独立して(有)クリエイターズ・ファクトリーを設立した。食に関する執筆が多く、関西の食文化をリードする存在でもある。編集の他、飲食店プロデュースやフードプランニングも行っており、今や流行している酒粕ブームは、氏が企画した酒粕プロジェクトの影響によるところが大きい。2003年にはJR三宮駅やJR大阪駅構内の駅開発事業にも参画し、関西の駅ナカブームの火付け役的存在にもなっている。現在、大阪樟蔭女子大学でも「フードメディア研究」なる授業を持っている。

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