名料理人が語る「完熟みそ」vol.2
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10月から4月頃まで限定発売する「完熟みそ」は、六甲味噌製造所の看板商品の一つ。兵庫県産の素材(蛇紋岩米・県産大豆サチユタカ・赤穂塩)を用い、酒精(アルコール)を添加せずに造っているので、その風味もまろやかで、豊かなコクと香りが特徴だ。そのためにプロ(料理人)から高い評価を受けている。そこでこのコーナーでは、そんなプロに「完熟みそ」の出来映えを検証してもらいながら、それを使った料理を披露してもらう事に。一回目の藤本喜寛先生には、10月に熟成してすぐのまだまだフレッシュ感の残る「完熟みそ」でレシピを作ってもらった。第二回目は、有馬温泉の老舗旅館「御所坊」の料理部長・目島正さんがその証言者に。目島さんには12月に「完熟みそ」を手渡し、翌2月にレシピを披露してもらった。目島さんに手渡した「完熟みそ」は、藤本先生に渡した10月のとは少し熟成度合いも進んでまろやかさがさらに増しているように思えた。目島さんは、老舗旅館の料理部長として「御所坊」三上真一料理長や「旬重」(ホテル花小宿内の割烹)松岡兼司料理長の相談役的な立場として活躍する存在。そんな巨匠が、いかに「完熟みそ」と接したのであろうか。二つの調味した味噌の使い方からその味わいを覗いてみよう。

〈目島正「御所坊」グループ料理部長 プロフィール〉 PROFILE
目島正さんは沖縄出身で、従兄弟・上原茂さんの伝手で関西へ。上原さんの兄弟子にあたる中島新介さんの下で本格派日本料理を修業した。その後、中島さんの師匠にあたる尾崎恵さんとの縁もあって当時「御所坊」の料理長をしていた河上和成さんと知り合い、彼の誘いにより26歳の時に二年間の約束で「御所坊」へ。その後、色んな料理屋での板場や「大阪調理製菓専門学校」の先生などを経験し、36歳の時に再び「御所坊」へ戻り、河上和成総料理長の下で料理長を経験している。同旅館で料理長を務めた後は、「ダイワロイヤルズホテル」へ移籍。同ホテルグループの伊勢志摩や高知のホテルで料理長として計16年間活躍した。伊勢志摩のホテル時代には、式年遷宮時に特別料理を作ったり、伊勢志摩サミットの関係者への料理も提供したりと、色んな経験も積んでいる。2024年に「御所坊」金井啓修社長の誘いもあって「御所坊」へ久しぶりに復帰。料理部長に就任し、グループの料理長の相談役として、若手料理人の指導役として調理全般の仕事に携わっている。

どんな料理にも使えそうな調味味噌を「完熟みそ」でSELECTED MATERIALS
目島正さんが「完熟みそ」を使っての料理を披露してくれたのが①春野菜の寄せ盛り②山椒ねぎ味噌の四種焼きの二品。それぞれの作り方は、後述しているが、ここではそれらの二品よりも、二つの料理に使っている二種の調味味噌の方を深く言及せねばなるまい。「春野菜の寄せ盛り」の重要な要素を成すのが、どろ味噌(ぬた味噌)で、和え物に適した万能味噌だ。柚子の搾り汁が利いており、甘めの中にも酸味がある調味味噌になっている。目島さんは、このどろ味噌を作る時に柚子酢を使ったと表現しているが、別にそれは我々が思う一般的な酢ではなく、柚子の搾り汁の事。高知県の馬路村の「柚子酢(ゆのす)」を用い、少し酸味の利いた甘めの調味味噌に仕上げている。一方、「山椒ねぎ味噌の四種焼き」に用いた山椒ねぎ味噌は、甘みがあってピリッとした辛さが特徴の万能味噌。目島さん曰く「何にでも使用できるが、特に焼物にはオススメだ」そう。この調味味噌の造り方は、いたってシンプルで、「完熟みそ」をベースに、砂糖、だし汁、酒、みりんを合わせ、そこに鬼卸しした生姜や刻んだ白ネギ、実山椒を加えて混ぜている。有馬は山椒が有名だけに隠し味として山椒を加えて甘めの味噌にアクセントを持たせているのだろう。
目島さんは、今回の取材で「完熟みそ」を初体験。袋を開けて舐めてみて「思ったよりしょっぱくなくて仕事がしやすい印象を受けた」と言っていた。「舐めて旨かったので、これならソース的な使用を試してもいい」と思ったそうだ。和食の職人は、具材に味噌掛けする時に白味噌を使う事が多い。赤味噌だと塩味が強く食材に掛けてもその色のせいで何に掛かったのかわかりづらいからだ。白味噌の方が甘みもあって味噌掛けには適しているのであろう。ところが「完熟みそ」は、糀や大豆の粒が残ったままの田舎造り。蔵出しの米赤味噌だったので目島さんは塩分が強いのではと見ためから想像してしまった。舐めてみると、塩分も約10%と抑えめで、十割糀ならではのまろやかな風味があったので「これは味噌掛けしても面白い」と、砂糖やみりんで甘さを補い、調味味噌に仕上げる事にした。ただ赤味噌には違いないので掛けて素材をわかりにくくしてしまうよりは、寄せ盛りでは下に調味味噌を敷いて上に具材を置くようにして料理を表現している。「冬場にもらったせいか、味噌もなじんで来ているように思いました。今回二つの料理を作って使用していますが、これらの調味味噌は万能味噌なのでどんな料理にでもタレやソースのように使えると思いますよ。私はどろ味噌を和え物に、山椒ねぎ味噌を焼物用に使用しましたが、それはあくまで使用例にすぎず、一般の人は味見しながらどんな料理に用いたら面白いのだろうと考えてみてはいかがですか」と話していた。

春野菜の寄せ盛り
日本料理の華やかさが伝わる「春野菜の寄せ盛り」は、目島さんが「完熟みそ」を用いて調味味噌を作り、それを下に敷いて春の野菜や車海老、エゾアワビ、紅芋団子などを載せる事で、和え物を上手く表現した一皿である。「春をイメージした一皿にしたかった」との話で、ここには菜の花やこごみ、ワラビ、タラの芽、うるい、蕗の薹、つくしなど山菜が多く使われている。これらの一品一品については、細かい仕事が施されており、各々を家庭でまねることはなかなか困難である。「私達職人は、細かい仕事をする事でお金をいただいています。だから素材各々に仕事を施してはいますが、読者はあくまで参考程度に。家庭では茹でたりしながら適当に仕上げてもらえればいいのでは…」と説明していた。この料理のポイントは、あくまでどろ味噌の調合にある。なのでそこさえ押さえておけば、あとはどんなものにでも活用できると目島さんは言いたかったのであろう。
こごみ・菜の花・タラの芽・つくし・蕗の薹・うるいは、茹でて吸地に10分程浸して、それを一旦絞ってから再度吸地に漬け込んでおく。再度漬け込むのは時間指定がないそうだ。茹でて浸したものを絞って水気を落とすのは、このようにしないと日持ちしないからである。ワラビについては、灰あくをまぶして、塩を加えた湯に入れ、それをラップで蓋をし、一日置いて使用している。ちなみに灰あくとは、木や藁の灰を沈殿させた後の澄んだ水で、材料の色出しやアク抜き、野菜類の色出しのために使用する。味噌漬け玉子は、あえてここでは作り方は記さず、目島さんは「家庭では購入したものを使うのがいい」とアドバイスしていた。
とにかく重要なのは、どろ味噌を作ってそれに色んな素材を絡ませて食す事だ。下段のレシピにもあるように作り方はいたってシンプルで各々の調味料を混ぜ合わせるだけ。「完熟みそ」に対して1/5の柚子酢(柚子の搾り汁)を用いる事で酸味と柚子香を上手く持たせている。ねぎのみじん切りを最後に加えるのはねぎの緑色が濃くなるので直前に入れるようにしているとの話であった。

山椒ねぎ味噌の四種焼き
ここでも料理の主役は「完熟みそ」で作った調味味噌である。「山椒ねぎ味噌」を予め作って置き、色んな食材の焼物のソースとして使用している。素材は、鶏肉・サザエ・海老芋・よもぎ団子で、これら素材を山椒ねぎ味噌で焼いているのだ。皿の中央にあるのは、蕗の薹の佃煮で、蕗の薹のエグみが味噌と合うのであえて加えたと話していた。
播州の百日鶏を焼いて山椒ねぎ味噌を載せて再度焼く。二回目の焼きについては、温まる程度で可。山椒ねぎ味噌が温まったら出来上がりだそう。茄子とサザエの壺焼き風は、油で揚げた茄子・サザエ・山椒ねぎ味噌を交互に入れてオーブンで火を通して仕上げている。海老芋は洗って縦半分に切ったものを30分程塩蒸ししている。そこに山椒ねぎ味噌を載せて焼いて作る。よもぎ団子は、白玉粉・砂糖・塩・抹茶を水で練って耳たぶくらいの弾力になったら適当な大きさに丸めて茹でて作る。それを山椒ねぎ味噌の上に載せている。
目島さんの作った「山椒ねぎ味噌の四種焼き」は、焼物と題しているもののまるで八寸にでも使えそうな雰囲気。華やかさがあって実に老舗旅館の日本料理らしい。「職人は、皿の中で表現するためにこのように盛り付けはしますが、要は主役は山椒ねぎ味噌。これを焼物のソースとしていかに活用すべきかをこの料理を通して見せました」と目島さん。山椒ねぎ味噌は、甘めの調味味噌の中にも山椒のピリッとした辛みが利いており、これだけでも十分酒のアテになりそうだ。「完熟みそ」と白ねぎ、鬼卸した生姜、酒、みりん、砂糖、だし汁を混ぜ合わせて作っている。甘味の要素は、「完熟みそ」本来の味の深さにみりんと砂糖を加えた事による。そして山椒が上手く隠し味になっている。鬼卸しで粗めにすった生姜が刺激をちょっぴり与えてくれるのだ。
(文/フードジャーナリスト・曽我和弘)
〈「完熟みそ」とは…〉KANJUKUMISO
六甲味噌製造所が醸造する人気の米赤味噌。昭和57年(1982)に産地が特定できる安心素材を用いて造ろうと始まったのがきっかけ。
その後、平成21年(2009)からは、地産地消を謳って兵庫県産品で造るようになった。但馬地方の蛇紋岩米と、兵庫県産大豆・サチユタカ、赤穂の塩を用いて天然醸造している。
豊かな香りとコクがある米赤味噌で、まろやかな風味を有している。令和3年(2021)からは、アルコール無添加にし、袋内で熟成が進む味噌に。
味噌が生きているために味噌らしい香りや味がさらに良くなった。素材の栽培量が限られているので年に一回の醸造。10月より4月頃までの限定販売品である。
名料理人が語る完熟みそレシピRECIPE
〈どろ(ぬた)味噌の材料:一皿分〉
完熟みそ 500g
砂糖 180g
柚子酢(柚子の搾り汁) 120g
生姜(鬼卸ししたもの) 50g
ねぎ 90g
揚げゴボウ 50g
〈どろ(ぬた)味噌の作り方〉
① 生姜は鬼卸しで粗めにする。揚げゴボウとねぎは小さく刻む。
② 完熟みそ、砂糖、柚子酢、1)の生姜と揚げゴボウを混ぜ合わせる。
③ 2)に1)のねぎを加えてさらに混ぜ合わせる。
〈春野菜の寄せ盛りの材料:一皿分〉
車海老 2尾
エゾアワビ 1/2個
こごみ 1本半
菜の花 3本
ワラビ 2本
タラの芽 2本
つくし 5本
蕗の薹 3個
うるい 1/4本
一寸豆 2個
れんこん スライス1枚
みょうが 1本
花びら百合根 1片
筍 1/6本
味噌漬け玉子(市販のもの) 1個
紅芋団子 15g
酒 適量
塩 適量
砂糖 適量
揚げ油 適量
〈春野菜の寄せ盛りの作り方〉
① 車海老は背ワタを取って頭をはずし、茹でる。海老の頭は揚げ油で唐揚げにする。
② エゾアワビは殻付きのまま表面に塩を振り、ぬめりや汚れを取ってから水でよく洗う。殻にナイフを差し込み、貝柱を外し、ヒモ(中腸線)と肝の砂袋を切り落とす。貝柱の口を包丁で切り落とし、酒煎りしてから半分に切る。
③ こごみ、菜の花、タラの芽、つくし、蕗の薹、うるいは鍋で茹でて吸地(だしに醤油などで調味した吸物の汁)に10分程度浸す。それを絞って再度吸地に漬けておく。
④ ワラビは鍋に灰あくを入れて混ぜる。鍋に湯を入れて塩を加えたものに浸しておく。ある程度たったらラップで包み一日置いておく。翌日、さっと水洗いをする。鍋に塩とワラビ、水を入れて沸かし、沸騰する前に火を止め、氷水に落として吸地に漬けておく。一寸豆は、皮をむいておく。薄い塩と炭酸(分量外)を入れた水に入れて2~3時間浸しておく。一寸豆を蒸して火が通ったら冷たい蜜(水5:砂糖1で作ったもの)に漬けておく。
⑤ れんこんは茹でたものを甘酢(分量外)漬けにする。
⑥ みょうがは半分に切って湯通しし、丘揚げして軽く塩を振る。冷蔵庫で10分程度冷やしてから甘酢(分量外)に漬ける。
⑦ 花びら百合根はむいてみょうばん水に5時間漬ける。沸かした湯に塩を入れ、よく洗った花びら百合根を入れて火を通す。ザルにあげて甘酢(分量外)に漬ける。
⑧ 紅芋を潰して砂糖を加えてきんとん(紅芋団子)を作る。
⑨ 器にどろ(ぬた)味噌をたっぷり敷いてその上に1)~9)を載せれば出来上がり。
〈山椒ねぎ味噌の材料:4人分〉
完熟みそ 500g
白ねぎ 200g
酒 50g
みりん 50g
生姜(鬼卸ししたもの) 50g
だし汁 100g
実山椒 20g
砂糖 140g
〈山椒ねぎ味噌の作り方〉
① 生姜は鬼卸しして粗めにする。白ねぎは細かく刻む。
② 完熟みそ酒、みりん、だし汁、実山椒、砂糖を合わせ、1)を混ぜ込む。
〈山椒ねぎ味噌の四種焼きの材料:一皿分〉
播州百日鶏(鶏胸肉) 50g
サザエ(大) 1個
海老芋 1/2個
蕗の薹 6個
茄子 1/3本
【A】
白玉粉 100g
砂糖 7g
塩 1g
抹茶 5g
酒 適量
醤油 適量
みりん 適量
塩 適量
揚げ油 適量
〈山椒ねぎ味噌の四種焼きの作り方〉
① 鶏胸肉は焼いてある程度火が通ってから、山椒味噌を塗って再度焼く。
② 茄子は皮をむいて揚げて適当な大きさに切る。サザエはよく洗う。
③ 耐熱皿に2)の茄子とサザエ、山椒味噌を交互に置いてオーブンで焼く。
④ 海老芋は水洗いをし、縦半分に切って30分間塩蒸しする。山椒味噌を載せて焼く。
⑤ 【A】を水で練って耳たぶぐらいの弾力になったら適当な大きさに丸めて茹でる。このうち40gを四種焼きのよもぎ団子として使用する。
⑥ 蕗の薹は茹でて酒・醤油・みりんで煮て蕗の薹の佃煮を作っておく。
⑦ 器に1)と3)~6)の料理を盛り付ける。

